上司の子育て【夫婦喧嘩は犬も食わない】
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上司の子供が、「遊戯王カード」を紛失したらしい。
子供にとってカードとは、まさに宝物である。もし僕が子供の頃に「君にとって人生とは?」と聞かれたら、間違いなく「人生とはカードです。」と答えるだろう。
そんな大事なカードをなくしたものだから、何日も家で泣いているらしい。その気持ちはスゴイわかるよ。夏休みに家に帰って、麦茶がめちゃくちゃぬるい時くらいの喪失感だよ。
そして、このことが両親を巻き込んで「夫婦関係悪化」という最悪の事態を招くことになるとは、この時の僕はまだ知る由もなかった。
奥さんの言いぶん
上司の奥さんは子供にこう言った。「残念だったね、もう泣かないで。今度は大切なものを失くさないよう注意しないとね。」
いい言葉じゃないか!もうね、「2020年度グッドマザー賞」あげちゃう。副賞で千葉県のマザー牧場の招待券もつけちゃう。家族みんなでGo To Chibaって感じ。
「そうそう。」「大切なもの」はしっかりいつも握り締めておかないといけないよ。大人でも「大切なもの」をずっと守ることは難しいんだから。
奥さんのこの言葉を聞いて、「お前はどう思う?」と僕の上司は言った。
いきなり質問されたので僕は困惑した。「相対性理論を今からアインシュタインに3分で説明して!」と言われるくらいビックリした。
けれど、調子の良い時、一流のバッターが150kmの豪速球が止まって見えるように、一流のビジネスマンは上司の質問が止まって聞こえる時がある。
そう、僕はこの時調子が良かった。
上司の唇の動きも、用務員さんのモップから垂れる水滴も、空を飛んでいるカラスさえもが僕には一瞬止まって見えた。1時間くらい考えた気がしたけれど、実際の回答には0.3秒しか経っていなかった。
「お子さんにとっては残念だと思いますが、奥様の言う様に、次回は気をつけようという話だと思います。覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)とでもいいますでしょうか、一度こぼしてしまった水はもう元には戻らないですし。」
決まりました。ワインにはチーズを、上司の話には引用とコトワザを。
WBCのイチローの様に「完全に綺麗なセンター前ヒット」が炸裂したと僕は感じた。けれど「お前も、そう考えるのか。」と僕の上司は寂しそうに言った。どうやら僕は何か間違えたようだ。
あのスローモーションは、もしかすると死ぬ前に見ると言われる「走馬灯」だったのかもしれない。そんな気が猛烈にしてきた。
上司の言いぶん
上司が言うには「覆水は盆に返る」らしい。
どうやらインターネットのヤフオクで300円くらいで買えるらしい。ぼくは思った。「ネットってすげえぇぇぇぇ!」てか「覆水盆に返るじゃなくて、覆水ヤフオクで買える!」じゃないか!以下略。
子供の頃、ぼくもカードをなくしたことがあった。
その時は、いつでも探していた。「向かいのホーム」「路地裏の窓」こんなとこにいるはずもないのに。
けれど、「ネット」ってすごい。最近はなんでもネットで買えるんだなぁ。
昔、オーストラリアのお店でアンティークの「ブリキのおもちゃ」を買ったことがあって、日本に帰って誇らしげに部屋に飾っていたけれど、ネットを見たら同じものが安く売られていて泣いた15の夜を思い出した。盗んだバイクで走り出したかった。
つまり僕の上司は、下を見て泣いてばかりいるんじゃなくて、現代の技術を使えば「新しい解決方法」があるということを子供に伝えたいらしい。
僕は気がつかなかったけど、言われてみると面白い考えだな。
けれど教育的にはどっちが良いのだろうか?解決すべきか、我慢するのか。
因みに奥さんはネットで買うのは断固反対で、それで現在は夫婦ケンカ祭り開催中らしい。
「 ワトスン君、今回の事件はぼくにとって最も些細で、最も重大な問題である気がするよ。」とネクタイを締め直しながらぼくは小声でつぶやいた。
ぼくの言いぶん
事件とは、まるでカバンに入れていた「イヤホンのコード」のようだ。
知らない間に、何かの衝撃で絡まってしまうけれど、根気よく順序立てて対応すれば絡まったコードは元に戻せる。
つまり、ぼくが言いたいことは「知るか!ボケェ!笑」「こちとら興味ないんじゃ!」
「ワンワン、わおぉーーん!!」
夫婦喧嘩は犬も食わない。
皆さんはどう思いますか?
おわり。