インドで人生観は変わらないのか?【第13話】ハンドサインは秘密のサイン
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インドは、最低で、最低で×100、最高な国だった。これは人見知りがインドに行って人生が変わった話。第13話。
耳かきが終わって、
「あのカスタマーノートを僕にも書かせろ。」と僕は言った。
しかし、「お前は、書くな。」と言われて、耳かきチャンピオンはどこかに去って行った。
インドでは、誰かに同情とか情けをかけてはいけない。自分の身は自分で守らないとダメだ。
「ズキズキ」と痛む左耳を押えながら、僕はまた歩き出した。
エア・インディアを探して、「リコンファーム」をしないといけない。
最初は「リコンファーム」の意味が分からなかったけれど(離婚ファーム?何それ食べれるの?)きっと、チケットを「Re confirm」することだと、ふと頭で理解した。
僕は、「エア・インディア」があると思われる「大きな商業ビル」の前を通った。そのビルは塀に囲まれていて、ビルと塀との距離は結構あった。
塀の前に、銃剣を持った警備員と、明らかに怪しい歯のないインド人が立っていた。
歯のないインド人が僕に向かって、日本語で叫んだ。
「エア・インディアはここじゃないよーー!!」
「あ、怪しすぎるーー!!」
てか、何で僕がエアインディアに行きたいことを知っているんだよ。
「超能力者ですか?あなたはサイババか何かですか!?」(本日二回目)
しかも、日本語で話しかけてくるのは絶対に怪しい!
僕は、その歯のないインド人の言葉を無視して、建物の塀の周りをグルッと歩いた。
暑いし、左耳は痛いし、頭がクラクラする。
僕は、ガイドブックの地図を見ながら確信した。
「エア・インディア」はてっきり路面店か何かで、道に面していると考えていたけれど、この塀に囲まれた大きなビルの中にあるんだ。だからこの辺をずっと歩いていても見つけることができなかったんだ。
それと、あの歯ないインド人は絶対に詐欺師だ。
日本語で、相手から話しかけてくるのは完全に怪しい。耳かきチャンピオンも値段に関してある種のウソをついた。。
ホテルの受付のインド人も「日曜日に駅は営業していない。」という嘘をついた。インド人はみんな嘘をついていると思って行動しないといけない。
「あいつは絶対に詐欺師だ!!」
「絶対に、あいつを信用してはダメだ。」
僕は、「銃剣を持った警備員」と「歯のないインド人」がいるゲートに向かった。
銃剣を持った警備員は、僕の顔をチラッと見て、「入っていいぞ」というハンドサインを無言でした。
空港でもそうだけど、インドでは寡黙で愛想がない人の方が信用できる。
歯のないインド人は、
「ねぇー、エア・インディアは潰れたよーー!!」っとずっと駄々っ子のように僕に向かって叫んでいた。
ねちっこい、なんとも怪しい声だった。
僕はそいつを無視して、ゲートをくぐった。その歯のないインド人はゲートの中まで僕を追ってくることはなかった。
門を抜けて、ビルの1階部分に向かって歩いた。
インドにしては近代的な建物で、そこには「銀行」やら「会社」のオフィスなどが存在した。
すると、僕は目の前の光景を見て愕然とした。
ビルの1階のガラスの扉に、僕は鼻っぱしらを押しつけて、部屋の中をよく観察した。
すると、エア・インディアの看板が、部屋の中でななめにぶら下がっていて、あとはモヌケの殻になっていた。
本当にエア・インディアは潰れたようだった。。。
僕は、横にいるケータイをもった身なりの綺麗な七三分けのインド人に、「エア・インディアはここですか?」と聞いた。
おそらく彼はエリートの銀行員だろう。
そのエリートの銀行員は、「エア・インディアは最近どこかに移転したんだよ。」とそっけなく答えた。
僕はその答えを聞いて、膝から崩れ落ちた。
「絶対に、、エアインディアに行かなきゃならないのに、、、泣」
と、僕は地面にひざまずき、頭を抱えて唸った。
すると、僕の耳元で日本語が聞こえた。
「あなたは、どこに行きたいのですか?」
さっきの歯のないインド人が建物に入ってきていたようだ。
「エア・インディアに行きたいです。」と、僕はその歯のないインド人と初めてまともに会話をした。
「私はさっき、言いましたよね?」
「エア・インディアはここには存在しません。」
「私についてきて下さい。」とその歯のないインド人は僕に言った。
まるで、迷える子羊を救う、お釈迦さまのように優しい声だった。
「すみません、わかりました。ついて行きます。」と僕は言った。
僕は、インドの1日目の体験から、銃剣を持った警備員には圧倒的信頼感を持っていた。
その銃剣さんが、「この歯のないインド人をビルの敷地内に入れた」ということは、この「歯のないインド人は信頼できる人物だ」ということだと思った。
僕は、少し不安だけど、その歯のないインド人について行くことにした。
2人で歩いている最中、その歯のないインド人は陽気に僕に話しかけてくれたけど、僕は左耳が痛いのと、うだるような暑さでまともに返事をすることはできなかった。
僕は会話をするのをやめて、ただ歯のないインド人の後ろをついて歩いた。
というより考えることを今は全て放棄した。
全て、このインド人に任せてみようじゃないか。
そう思いながらフラフラと金魚のフンみたいに歩いていた。
すると、、、ラルフローレンのワイシャツみたいな、「明らかに名門校だろうな」という制服を来た2人組の学生カップルが僕の目の前を通りすぎた。
その品のいい学生のカップルは、僕にだけ見えるように、すれ違い様に歯のないインド人のオジサンを指差して、
「このオジサンに、ついて行ってはダメだよ!」というハンドサインを僕に送った。
僕はその合図を見てハッとした。
一瞬の出来事でもうその学生カップルはどこかに消えていた。
一瞬、、、まさに一瞬の出来事だったけど、そのハンドサインを見て僕の心に電撃が走った。
本能が、僕のたよりのない直感が、
「あのハンドサインは嘘ではない。」と言っていた。
だから、
「あ、あの、、、」
「や、、、やっぱり、一緒に行くのをやめます!!」
と歯のないインド人に向かって、僕は叫んだ。
つづく。。。