グッドラック・クリケット【第8話人見知りがインド行ったら人生変わった】
スポンサーリンク
インドは、最低で、最低で×100、最高な国だった。これは人見知りがインドに行って人生が変わった話。
僕のパスポートを持った少年が、どこかに消えた。
「なぜ、パスポートをあの少年に投げたんだ!」
「あの少年はどこに行ったんだ!」と僕は、ホテルの受付の人に激しく詰め寄った。
受付の人は悪びれるそぶりもなく「ノープロブレム」と一言だけいった。
「何がノープロブレムだ!この野郎!」
「だいたいインド人は、窓が割れたってノープロブレムと言うじゃないか。普通に大問題だろ!」と僕は心の中で叫んだ。
僕の抗議もむなしく、受付のオジサンは「まぁ座れ。」とだけ言った。
僕は、受付の横にある、誰がどう見たって全く掃除をしていないと思われる「年季の入ったソファー」に腰掛けた。
するとその10分後、
僕のパスポートを持った少年がホテルに帰ってきた。
「コピーとってきたよーー!!」と少年は笑顔で叫んだ。
「いや、コピーかぁーーい!!」
っと、ぼくはソファーの上でズッコけた。
死ぬほど汚いソファーに後頭部を強打して悶絶した。
「何でここにコピー機置いてないんだよ。」てか、もっと説明してくれよ。
とまぁ、ぼくのパスポートは無事に戻ってきた。(裏で何をされていたかは、分からないけれど)
ここで、本題だ。「パスポートも戻ってきたし、さっき話していた、ここら辺の周辺地図を下さい。」とぼくは言った。
「あぁ、地図か、それならこの少年についていけ。そこに地図はあるから。」とオジサンは言った。
別の場所に行って地図をもらう為に、僕は少年と一緒に歩いた。
僕が泊まったホテル(ツチノコホテル)は日本の旅行代理店で予約したホテルだし、この少年はパスポートを返してくれたし、信用できると思った。
この少年はまだ9才だった。
足は裸足で、ビヨンビヨンにのびたTシャツを着ていた。
友達とクリケットをするのが趣味らしい。
「クリケットかぁ、何となくだけど知っているよ、なんか野球に似ている奴だよね。バットでボールを打つやつ。」と僕は言った。
「野球のことは、よく知らないけれど、そうだね、バットでボールを打つんだよ。」
「ぼくは、クリケットの選手になってお金持ちになりたいんだ。」とその少年は笑顔で語った。けっこうお喋りな少年で可愛らしかった。
「いっぱい練習すれば、きっとプロになれるよ。」と僕は少年に言った。
そんな話をしていると、目的の建物の前に着いた。
「ここだよ!ぼくは、建物の前で待っているね。」と少年は言った。
僕は大人のインド人に連れられて、建物の中に入った。
建物の中のかなり奥にある、狭い部屋の汚い椅子に座らされた。
「あの、地図だけもらえれば良いんですけれど。。」と僕は言った。
机が1つ、椅子が4つあるとても狭い部屋で、僕と大人のインド人の計4人が、ギュギュウになって座っている。。何とも息が詰まる場所だった。
「あの、地図は、、、」
「そんなことより、お前はツアーに入れ。安くするから!」
「で、出たーーー!!悪徳軟禁「ツアー勧誘」ダァーー!!」(心の声)
「いえ、結構です。」と僕は答えた。
「何でだ?タージマハルとか、バラナシとか、良いツアーはいっぱいあるぞ。10万円で良いからさ。」とインド人が言った。それに合わせて、ほかのインド人も、ワチャワチャ叫ぶ。
「た、高ぇえええ!!、てか、なぜ日本円で金額提示してくるんだ??」
「こ、これが、インド流、圧迫面接か、、、日本の就職活動を経験していなかったら一発アウトだったぞ。」
「実は僕、全て行く場所を決めているんです。」と真っ赤な嘘をついた。面接には嘘がつきものである。
「日本のツアーに入っていて、インドにも1週間くらいしか滞在しないのです。(ウソ)」
「本当か?何日から何日までのツアーだ?最終日1日だけでもこっちのツアーに入らないか?」
なかなか、インド人も引き下がらない。
少し怖かったけれど、、、昨日僕に起こった事件と比べたら、たいそう些細なことに感じて、僕は冷静に、そして穏やかに、相手の意見を尊重しながら拒否をすることができた。
すると、建物の入り口の方で「ガタっ」いう音がした。
僕の対応が良かったからか、それとも次の獲物が来たからなのかは分からないが、僕はこの場所から解放されることになった。
僕がインド人の1人と一緒に出口に進んでいると、明らかに浮かれた顔をした「日本人の大学生3人」とすれ違った。
僕は「あ、、あの、、」とその日本人の学生達に声をかけて注意しようと思ったけれど、
「早く歩け」とインド人の1人に背中をこづかれて、その日本人達に注意を促すことはできなかった。
「きっと彼らが大学4年生で就職面接を経験していたら、大丈夫だ。」
「新入生だったら、、、きっと厳しい結果になるだろう。。。」と僕は思った。そして注意できなかったことが、何より心残りだった。
建物の入り口で、僕は懲りずにインド人に質問した「あ、、あの、、周辺地図は、、、?」
インド人は言った。「そんなもん、ねぇよ!」
「世の中とは、なんて残酷何だろう。」と僕は思った。
その後、建物の入り口の前には、さっきの少年が僕を待っていた。
僕がツアーを成約しなかった為か、
さっきの笑顔はどこかに消えて、しょぼくれた顔をしていた。
「ツチノコホテル」まで、僕は少年と2人で歩いて帰った。
さっきまでは、あんなに「おしゃべり」だった少年はずっと無言で無口だった。
ツチノコホテルの前で、僕は「ごめんよ」と少年に言った。
9才の少年は、僕を無視して、自分の役目を終えてどこかに走って行った。
僕は走る少年に向かって叫んだ。
「おーい。少年!」
「クリケット頑張れよ!」
少年は「クリケット」という単語を聞いて、笑顔になって「グッドラック」と僕に返事をくれた。
何だか僕は、インドで叫んでばかりだ。
少年よ大志を抱け。詐欺師なんかに、、なるんじゃねぇぞ。
ぼくのインド二日目が、いよいよ始まる。
つづく。。。