インドで人間不信になった旅のブログ【第23話】ガンジーの秘密
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インドは、最低で、最低で×100、最高な国だった。
人見知りがインドに行って人生が変わった話【第23話】「ガンジーの秘密」
ビートルズも利用したことのある伝説の楽器屋で、シタールのCDを買った。
ラーメンとチャーハンを同時に食べたくらいの満足感だった。
僕はその熱も冷めやらぬまま、もう一つの楽器屋に向かった。
先ほどの「高級店リキラーム」の近くに、庶民的な店があった。入店すると、そこにはギターやらバンジョーなどが飾ってあった。安くて小さなマンドリンもあった。
海外の楽器屋を巡るのは楽しい。
ふらっと入って、ふらっと勝手にギターを弾いても全然怒られない。
ディープパープルの「スモークオンザウォーター」とか、
ニルバーナの「スメルズ ライク ティーンスピリット」とか、
割と簡単な曲を弾いても、
「Oh , You are nice !」とか言って褒めてくれる。
嘘かもしれないけど、その接客態度は素晴らしい。
別に褒めてくれなくても良いけど、
1度笑顔で会釈して、「好きなだけ弾いて良いよ」と放置されるだけで救われる。
日本の楽器屋は、
結構上手い人じゃないと試奏しちゃいけない雰囲気がある、、気がする。
まぁ気のせいか?
いや、、、気のせいではない。
インターネットの掲示板にこう書いてあった。
「下手なやつはギターを試奏するな。」
「というか買うな。 」
それに、
昔、、バイトの後輩がこんなことを言ってた。
モンキーキックさん、、
「ニルヴァーナのスメルズ・ライク・ティーンスピリットを東京の楽器屋で弾くのは条例で禁止されているんすよ」
そ、、そうなのか!?後輩!!
「はい、、店員に簡単な曲を聞かせ続けるのはダメです。完全に迷惑条例違反っす。」
ま、、まじか!?
「あと、、都庁の展望台とか、地下鉄の駅とかに無料のピアノが置いてありますよね?あれも下手なやつは弾いてはダメっす。」
そ、、そうなのか後輩!!
その後輩は、、
何とも物分かりの良いやつで、誰からも愛されるやつだった。
頭も良くて、愛想も良くて、顔もハンサムだった。
「きっとこいつはメガバンクに入るであろう。」と僕は会話をしながら確信していた。
本人に言ったことは一度もないけれど。
そんな男が言うんだから、きっとそれは嘘ではない。
きっと東京の楽器屋では、下手なやつは楽器を演奏してはいけないんだ。
僕という、男はなんとも世間知らずで
なんとも、とっつぁん坊やなのだろう。
けれど、
おい、後輩聞こえるかい??
僕はついに、ここインドの地で楽園を見つけたよ。
10分くらいニルバーナを弾いているけど、誰も僕を注意してこないよ。
このまま何時間だって弾ける気が、今ならするんだ。
まるで時間が止まっているか 、、
世界に自分だけしかいないような錯覚に陥った。
自分のギターからレッドツェッペリンの「天国への階段」が流れている気がした。
すると、、
ハロー、、 ハロー、、
とどこからか声がした。
後ろを振り返った。
すると、にやけた顔したインド人が僕の後ろに立っていた。
店員だと思われるそのインド人は、ニヤけながら言葉を発した。
「ハロー、ハロー、、
あなたは、ガンジーの秘密を知っていますか?」
「え?」
「ガ、、、ガンジーーですか?」
今までのインド人とはまた違った会話のアプローチだ。会話の角度がスノーボードのハーフパイプくらいえげつない。
僕はうろたえながら、何とか声を発した。
「あの、、、ガンジーとは、、、
マハトマ・ガンジーのことですか??」
「少しだけ、、、彼のことを知っています。」
「非暴力・不服従や、塩の行進をおこない、
イギリスに抵抗し、
インドの独立に貢献した人物で、
マハトマとはサンスクリット語で、
偉大なる魂という意味ですよね?」
と答えた。
僕は会話をしながらピンときてた。
インドではマハトマ・ガンジーはカリスマであり稀代の英雄である。
日本でいうなら、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、いやそれ以上かもしれない。
因みに、インドのお札は、何と全て「マハトマ・ガンジー」の肖像画が使われている。
(マハトマガンジーのロイヤルストレートフラッシュや!!)
それだけインド国民に愛されている人物なのだろう。
きっと僕に話しかけてきた楽器屋の店員の彼も、
偉人であるガンジーの魅力を、
外国人である僕に伝えたいんだ。
彼は口をひらいた。
「そうです、マハトマ・ガンジーのことです。よくご存知ですね。」
「ガンジーはインド国民に愛されています。偉大な人物です。」
うんうん、と僕は頷いた。
けれど、、、
「ガンジーは、、、めちゃくちゃ、女好きだったんです!」
「仕事もせずに、、何人もの女の人や愛人達と生活をしていたんです。」
「私はガンジーが好きではありません。」
「さぁ、、何か楽器を買ってください!!」
「いや、何でだよ!」
と僕は心の中でつぶやいた。
「そっかぁ、ガンジーって女好きだったんですね。そしてあなたはあまりガンジーのことをよく思ってないのですね?わかりました。じゃあ何か楽器を買います。」
ってなるかいな!
何という接客なんだ。
斬新すぎるよ。
接客業界のイーロン・マスクか!!
日本の楽器店の接客の方が100倍いいよ。
僕は、必死に愛想笑いを浮かべながら
「ガンジーの話面白かったです。ありがとうございました!また来ます!」と言って、何も買わずに外に出た。
日本人の「また来ます」を、
信じている人は世界中に誰もいやしない。。
インド人の店員さんの少し寂しそうな顔をみて、
何だか僕も少し寂しい気持ちになった。
けれど、そんなインドをなぜか憎めなかった。
この国には、何か偉大な魂が眠っている気がする。。。
つづく。。。