インドに行ったら人生が変わった。第6話
ドイツ人のお陰で、地下鉄の駅に着いた。
僕は、窓口で電車の切符を買った。
10ルピーだったので、100ルピー札を係員に渡したが、お釣りが80ルピーしか戻って来なかった。
係員に抗議しようと思ったけど、もうそんな体力はどこにもなかった。
電車の車内はガランとしていて、席に座っているのは僕一人だけだった。
数分後、隣の車両からフラフラと30代くらいのインド人男性が同じ車両に入ってきた。
8人がけくらいの長椅子で、他にもたくさん席が空いているのに、インド人は僕の真横に座った。
そして、僕の太ももを無言で触りはじめた。
スリなのか痴漢なのか分からないが、どちらにしてもまずい。
昔、土手を1人で歩いていた時に、男性にホテルに誘われたことがある。
僕はゆっくりと立ち上がり別の車両に移動した。
そうこうしていると、目的の駅についた。
このインド旅行で、最初の2日間だけホテルを予約していた。今はそのホテルに向かっている。
電車を降りてから、旅行代理店でもらった周辺地図を確認する。
縦に2本、横に1本だけ道が書かれている地図で、子供が書いた宝の地図のようだった。
「最寄駅」と「道路2本」と「ホテルの名前」しか書かれていない。
看板の文字はヒンドゥー語で、建物はボロボロ、街灯などは存在しない。

駅前を歩いたけれど、ホテルを見つけることはできなかった。
そこで、三輪車タクシーのオジサンに道を尋ねた。
「このホテルを知っていますか?」
「あぁ、わかるよ!俺が連れっていってやるよ。」
「料金はいくらですか?」
「10ルピーだけでいいよ。」
「分かりました。宿の目の前までお願いします」
「任せておけ」
数分後、
「うーーん、ここだと思うんだけどなぁ。見つからないなぁ。」
「場所が分からないから、ここで降りろ。」とオジサンは言った。
「場所は分かるって言ったじゃないですか、ホテルまで連れていってください」
「ここが地図に書いてある道なのは間違いない。あとは自分で探せ」
「それと、料金は20ルピー払え」
「何でだ」
何で目的が達成できずに、料金が上がっているんだ。
とりあえず、最初に言われた10ルピーだけ払ってタクシーから降りた。
歩いている途中、何人かの若者に声をかけられたが、全て無視して歩いた。
さらに歩くと、車の横に立っている若者が「この車に乗らない?」と声をかけてきた。
その若者は僕の手を無理やりつかんで、後部座席に押し込もうとする。
僕は「アイ ライク ウォーキング フォー リアル」と言って、手を振り解いて走った。
時刻は深夜12時になろうとしている。命の危険が迫っている。
なんとなく近場の宿屋に駆け込む。
その宿屋で、僕が泊まるホテルの場所を聞いた。
「あぁ、ここ知っているよ」
「この道を少し歩いて、右手に見えるところだよ。」と宿屋のオジサンが愛想ゼロで言った。
その愛想の悪さが唯一の救いだった。少し歩くと本当に宿屋が見えた。
ツチノコくらい発見に苦労した。
やっとのことでホテルにチェックインすると、茶色い土の地面にベッドが1つ置かれた部屋に案内された。
僕はすぐさまベッドに倒れ込んだ。
喉元に銃剣を突きつけられて、おつりを誤魔化され、バスの窓が割れ、ドイツ人と出会い、色々あった1日だった。
深夜3時にホテルの前で大声で叫ぶ若者や、ガラスの瓶が割れる音は、もうたいして気にならなかった。
つづく。。。