人見知りがインド行ったら人生変わった【第20話】カレー地獄
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インドは、最低で、最低で×100、最高な国だった。これは人見知りがインドに行って人生が変わった話、「第20話」。
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JALでリコンファームの手続きをしてもらった後、
「晩ご飯でも一緒に食べませんか?」と原田さんは僕に言った。
僕は、この人と晩ご飯を一緒に食べるべきかどうか正直迷った。
だって、「見ず知らずの大人についていってはいけないよ。」と子供の頃に親に言われたことがあるから。
脳みそをフル回転して考えた結果、
やっぱり僕は、「今日初めて会った見ず知らずの大人」と晩ご飯を食べることにした。
「嘘つきは泥棒のはじまり。」だとか「自分が人にされて嫌なことは人にもするな。」とか、
僕が日本で学んだ「それらしい言葉」は、きっと「この世界」では半分はうまく機能して、半分はうまく機能しないのだろう。
「郷にいったら、郷に従え」という言葉もきっと半分はウソで、半分は本当なんだ。
というか、まぁ、
原田さんは、もう見ず知らずの大人ではない。同じ苦労を分かち合った戦友(マブダチ)ではないか。
まだ互いの全部を知っているわけではないけれど、一緒に晩ご飯を食べよう。その方が絶対にいいと僕は思った。
「さぁ、レストランに入ろう」と思ったけれど、
いや、それっぽい店が全然ない!
えーーっと、安くて美味しいラーメン屋や、チェーン店の居酒屋はどこですか?笑
インドのニューデリーという街は、
ヒルトンホテルとか外資系ホテルの横に備わっている「王宮みたいな豪華なレストラン」か
「社会科の教科書で見た、戦後の闇市みたいなボロボロのレストラン」の
壊れた二択しか僕の目には映らなかった。
「いや、高低差ありすぎて耳キーーンなるわっ!」
「千賀のお化けフォークか!」
高いレストランに入ることは避けたい、僕は学生でお金がないし、明日以降の為にも今はまだ節約しておきたい。
けれど、あまりにボロボロのレストランに入るのもどうかと思う。リーズナブルだけどわりかし綺麗なレストランを探して僕らはまた歩き始めた。
20分くらいは歩いた。
そして僕らはやっと、「彼女と初デートでこの店を選んだとしたら、1000年の恋も一瞬で冷めるわ」的な店を発見して、入店した。
席に座り、
僕はベタついているテーブルから、ひょいっとメニューを持ち上げて、ヌタリとページを1枚1枚めくっていった。
けれど、30ページくらいあるその重厚なメニューは、基本的にヒンディー語で書かれていて、僕らはメニューの内容を理解することができなかった。
基本的にヒンディー語は、ミミズのはったような文字か、漫画ナルトの額当てのマークのように僕には見える。
僕は、メニューの説明を受けるため、ウェイターさんを近くに呼んだ。
愛想の良い、朗らかな人柄だった。
膨大なメニューを指差して、1つ1つ「これは何ですか?」と尋ねた。
「これは何ですか?」
「ジャガイモのカレーです。」
「これは何ですか?」
「ナスのカレーです。」
「これは何ですか?」
「ホウレンソウのカレーです。」
「おいおい、、、嘘だろ!!!」
そんな、、
それなら、、
「それならば、、」
僕は急いでメニューを30ページめくってから、一番最後に書いてあった料理の名前を指さした。
「これは何ですか?」
「アスパラのカレーです。」
「いや、、全部カレーやんけ!」笑
「桃太郎電鉄で、カレー社長がこの街を、もう既にカレーで独占してるんですか?!」
いや、わりかし僕はカレーが好きだから別にいいけどね、アンパンマンのキャラで一番好きなキャラはカレーパンマンだけどね。
流石にインドに1年とかいたら、逆にカレーを嫌いになる自信があるよ。
僕と原田さんはジャガイモのカレーである「アル・カリー」を注文した。
(「いや、単三電池か!」と僕は1人で思った。)
因みに、日本のカレー屋さんによく置いてある「ナン」は、北インドの王宮料理であるらしく、ニューデリーの庶民にとっては一般的な食べ物ではなかった。
ニューデリーでは、「ナン」の代わりに「チャパティー」というものが一般的に食べられている。
(何でも、精製した小麦は高価で貴重なものであったり、焼く窯を用意するのが大変らしい。その点、チャパティーは外にある屋台とかでも作れる。)
「チャパティー」とは全粒粉とかグラハム粉と呼ばれるものに水を混ぜて焼いたもので、薄い「クレープ」とか「ガレット」みたいな味がする。
「パリっ」、「フワッ」とした感じというよりは、「モチ」っとした感じで、慣れてしまうとこれはこれで悪くない。
白米じゃなくて、玄米です。的なノリだと思う。
僕と原田さんは、「アル・カリー」と「チャパティー」を頼んだ。
質素な食事をしながら会話をしようと思っていた。
けれども、、、
「あれ、おかしいぞ?」
なぜだか僕らのテーブルに大量の料理が次々と運ばれてくる。
まるで、おとぎ話の竜宮城のシーンのような、
テレビの大食い番組のような、、
僕の横にいた、原田さんは無邪気にこう言った。
「うわぁ、モンキーキックくん!このお店はサービスがいいお店だね!」
「違うぞ!この野郎!」
僕には、分かる!
こいつは嫌な予感がするぞ。
原田さん、あなたはピュアすぎる。
ピュア田ピュア造とこれから呼ばせていただく。
僕の本能が、、たよりのない直感が、、
これは確実にキナ臭いやつだと言っている。
きっと、こいつらは、注文していない料理を勝手に持ってきて、勝手に料金を上乗せする気がする。
「と、止まれ!」
止まってくれ!!
8時間くらいかけて作った完成まじかのドミノ倒しが暴発した時くらい、
飲み会の後に乗ったタクシーが、道に迷ってしまった時の料金メーターくらい、
「止まってくれ!」
心のそこから叫んだ。
すると、インド人のウェイターは
「バレましたか、、」みたいな顔をして、、、
「お金はかかりますけど、でも美味しいですよ?」と笑いながら言った。
「いや、やめてよ!」笑
と僕は言った。
(お前の顔を、ナンぐらい引き延ばしたろか!)
インド人は、、寂しそうに注文しなかった料理を撤収していった。
(というか、あれはメニューのどこに書いてある料理なんだ?)
まったく、油断も隙もあったもんじゃない。
結局、僕らは追加の料理を食べることもなく、
追加の料金を払うこともなく、、
質素にジャガイモのカレーを食べた。
けれど、インド人が途中まで持ってきた、あの美味しそうな料理が、
いつまでも、僕の頭の中で残像としていすわり続けていた。
口の中にあるジャガイモは、
いつもより、
なんとも素っ気ない味がした。
つづく、、、