インド旅行、つらすぎワロタ。【第15話】DTTDCを知っているかい?
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インド旅行で人間不信になった話。「第15話」
僕は、インド人の若者について行くことにした。
そのインド人の若者は「DTTDCを知っているか?」
「俺たちは今からDTTDCに向かうんだ。」と歩きながら言った。
僕は「インドの地球の歩き方」を飛行機の機内で熟読していたから、既にDTTDCが何なのかを知っていた。
DTTDCとは「Delhi Tourism and Transportation Development Corporation」の頭文字のことである。
要は、「インド政府公認の旅行代理店」みたいな感じである。
「いや、長えぇよ!!」
「円周率か!」
「パブロ・ピカソ」の本名くらい長えぇよ。。
誰が覚えられるねん!
けれどまぁ、僕の愛読書である「インドの地球の歩き方」によれば、インドのニューデリー周辺には、ありとあらゆる詐欺師がいて、
旅行者を悪徳旅行代理店に連れて行ったり、お土産屋に連れて行ったりと、毎日数えきれないほどの詐欺被害が発生しているらしい。
だから、日本人の旅行者がツアーを申し込んだり、情報を集める時は「政府公認のDTTDC」を使った方がいいですよ。と書かれていた。
「つまり、この若者は信頼できる。」と僕は思った。
「いいインド人の若者に出会えて良かった。」
すると、若者と僕は目的地に到着した。
そのインド人の若者は、旅行代理店の看板を指差して「ここが、DTTDCだ。」と言った。
「おいおい」
「マジかよ、、、」
「頼むよ、勘弁してくれよ。。」
「看板にはDTTBCって書いてあるよ。。」
ここは、デリー・バッドガイ・コーポレーションの略ですか?
あきらかに、「モンゴル800」略して、モンパチ。。。
間違えた。
「パチモンじゃねーか!」と心の中で叫ぶ。
インド人の若者は、僕が手に持っていた「インドの地球の歩き方」を「サッ」と奪いさり、ニューデリーの周辺地図のページを指さした。
「ほら、見てみろ。この地図のここに書かれているDTTDCというところだぞ。」と彼は言った。
「いや、違う!違う!」
確かにこの地図にはDTTDCの場所が書かれている。
けれど、僕はさっきまでコンノートプレイスを2時間くらい、さまよい歩いていたので、少しずつニューデリーの土地勘が芽生えてきていた。
今、僕たち二人がいる場所は、この地図に書かれている場所とは明らかに違う場所であることは、いとも簡単に理解できた。
てか、お前の知り合いの旅行代理店の看板、「DTTBC」じゃねぇか!!それだけでアウトなんだよ。
日本人の義務教育をなめるなよ!
いくら英語が苦手でも、DとBの違いくらいは僕にだってわかるんだからな!
僕は、かなりショックだった。
ショックで涙が出そうだったけど、、
さっき助けてくれたこの若者も、やっぱり詐欺師であることを確信した。
いったい何重の罠が、
この街に、この国に、仕掛けられているんだよ!
てか、なんでコイツはすぐに、僕の「インドの地球の歩き方」の地図のページを開くことができたんだ?
もしや、「この本を持っている日本人」を、毎日獲物として狙っているんじゃないか?と僕は仮説を立てた。
まるでさ、鬼滅の刃で例えると、鱗滝さんのキツネのお面をもった子供を狙う鬼みたいな感じでさ。(地球の歩き方は素晴らしい本だけど、持って歩くのは危険みたいだ。)
「インドという国は、日本人を狙う鬼がたくさんいる修羅の国だ。」
「本当に誰も信用できない場所なんだ。」と思って、僕は悲しくて仕方がなかった。
けれど、
さっきの「歯のないインド人のマフィア」から僕を救ってくれたことは本当に感謝している。
マフィアについて行った方が、もっと酷いことが起きていた気がする。
悲しいし、残念だけど、彼を傷つけずにこの場を去ろう。
今から僕がつく嘘は、人を傷つけない優しい嘘さ。
「あの、、、今日は疲れたから、明日またここに戻ってくるよ。」と僕は言った。
「え、、何でだよ?今、中に入ろうぜ!」とインド人の若者は言った。
「今日はさ、もうなんか疲れてしまったんだ。だからごめん。また明日くるよ、場所も把握したしさ。」
(ねぇ、、パトラッシュ、、、僕はもう疲れたよ。。最期にこの場所にこれて本当に良かったよ。)
「え、何でだよ!今入ろうよ!」
「ごめん。」
「入ろうよ!」
「ごめん。」
「そっか、わかったよ。」
おぉ、、やっと諦めてくれたか!理解してくれてありがとう。
作戦はうまくいったぞ!
「じゃあさ、」
「お前、金払え!!」
「え?」
「お前、金払え!!」
「いや、なんでだよ!」笑
「君、お金払わなくていいって、さっき言ってたよね?」
「気が変わった。こんなによくしてやったんだから金払え!」
「嫌だ!ふざけるな!」僕も次第に興奮してきて、語気を荒らげて叫んだ。
助けてくれた時にお金を請求してきていたら、
もしかすると、僕はお金を渡していたかもしれない。
けれど、こんな風に人を騙すような形で、
お金を請求してくるのが許せないんだ。
僕は怒りに満ちた目で、彼をにらみつけた。
彼は「警察を呼ぶぞ!」と大声で叫んだ。
「いや、何でだよ!」笑
こっちが呼びたいくらいだよ。
てか、こんな状況ならお前も呼べないだろ。
「As you like (好きにしろ!)」と僕は言った。
この「As you like」という言葉はインド人の口癖だった。
商店に行っても、タクシーに乗っても、値段交渉の時に、必ず「As you like」と言って、本当の値段を誤魔化してくるんだ。
僕は、皮肉を目一杯込めて「As you like」と相手を軽蔑しながら言った。
すると、これが彼のカンにさわったらしい。
「なんだと、てめぇ!」
「わかった、じゃあ俺の仲間を呼んでやる!」と、どこかに電話をかけながら彼は叫んだ。
「あぁ、上等だ!」と僕もつられて大声で叫んだ。
すると、彼の仲間は、観光客を狙うために、ニューデリーの至るところに待機していたようだ。
数分もしないうちに、周辺から彼の仲間がゾロゾロと集まってきた。
僕は、気がつくとあっという間にインド人の若者のグループにとり囲まれてしまった。
強面の、、マッチョなやつも混じってやがる。。
これは、、、まずい、、、、
絶対絶命のピンチが訪れた。。。
僕は、そっと目をつぶり、
全集中、、、
「水の呼吸、、、拾五の型」とボソリとその場でつぶやいた。
つづく。。。