インド旅行ブログ【第17話】動け横隔膜!
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インドは、最低で、最低で×100、最高な国だった。これは人見知りがインドに行って人生が変わった話。
心が完全に折れてしまっていた僕の目の前に
1人の日本人が現れた。
階段に座っていた僕の目の前を、
人の良さそうな顔をした、年上の日本人が歩いていた。
なぜその人が「日本人」だと分かったのかというと、「インドの地球の歩き方」を、まるで赤ちゃんでも抱くように、大事そうに両手でかかえていたからだ。
きっとこのチャンスを逃したら次はない。
そんな気がした。
僕の心は完全に砕けちっていて、もう一人ではどうすることもできない状態だった。
身体が重くて、歩くことも、立つこともできない。
この人に助けてもらうしか、もう助かる道はないのだろう。
これは最初で、そして最後のチャンスだ。
さぁ、言うんだ。
「お願いします。助けて下さい。」
小学生でも言える簡単な文章、
たった12文字のささいな言葉、
それなのに結局、
僕は相手に伝えることができなかった。
いざ言おうとしたその瞬間、緊張して喉が痙攣してしまい、言葉と音が全く出なかった。
見知らぬその年上の日本人は、当然僕を助ける義理なんかあるわけもなく、僕の横にある階段の狭いスペースを通りぬけていった。
素手でうなぎを掴むように、するりと最後の希望が通り抜けていく。
僕の横を通りすぎる時に、一瞬、お互いの目があった。
けれど、またもや僕は生まれながらの人見知りのため、反射的に「サッ」と視線をそらし、地面に目をふせてしまった。
「頼む、話しかけてくれ。」
と、地面を見ながら神様に祈った。
けれど、その男性は、無情にも僕の横を無言で通りすぎて行った。
「そりゃ、そうだわな。」
「あぁ、ダメだ。。」
「もう、本当に僕はダメだ。」
「僕を助けてくれる人は誰もいない。」
相手に決定権を与えてはダメだ。
他人に自分の運命を任せてはダメだ。
自分から行動しないやつの人生なんか、何も変わりはしない。
そう思いながら、
僕は後ろを振り返ってみた。
すると、その僕の横を通り過ぎた日本人の男性も、なぜだか名残惜しそうにこちらを見ていた。
まるでドラクエの「スライムが 仲間に なりたそうに こちらをみている」みたいな状況だった。
僕は少し焦りながら、
急いで、大きく深呼吸をした。
スーー、、、ハーー、、、
フーー、、、ハーー、、、
よし。
さぁ、言え!
動け、横隔膜!
「あ、」
あ、、あ、、、
「あ、、、あの、日本人の方ですか?」と僕はその年上の日本人に話しかけた。
心臓の鼓動が、まるで和太鼓のように、ドクンっドクンっと鳴り響き、
手のひらの汗は、まるで夏の暑い日の麦茶のコップみたいだった。
「そ、、そうです。。。」と、その日本人は言った。
その僕より年上の日本人の男性は「原田さん」という名前だった。
原田さんは、さっきタクシーに乗った時に、財布に入っていたお金を全て取られてしまったらしい。
「だから、私は両替所に行って、別の財布に隠し持っていた日本円を両替したいんです。」と原田さんは言った。
「あ、、あの、、、僕、両替所の場所を知っています。」
「よ、、、よかったら、一緒に両替所に行きませんか?」と僕は言った。もうコンノートプレイスの地理は自分の庭くらいに理解していた。
「えぇ、良いんですか?」
「是非、お願いします。」と原田さんは丁寧に僕に頭を下げた。
僕は、生まれて初めて
見知らぬ日本人に、自分から声をかけることができたことと、
人の役に立てることが嬉しかった。
僕は原田さんと一緒に、両替所に行くことにした。
さっきまで、あんなにもうダメだと思っていたのに、不思議とまた歩く勇気がわいてきた。
例え一人一人が弱い存在だったとしても、仲間がいれば少しだけ強くなれるんだ。
戦国武将、毛利元就の「三本の矢」の逸話のように、
一人でいた時、僕の心は簡単に折れた。
けれど、仲間がいれば簡単には折れない。
絶対に大丈夫だ。
だけど、、、今は僕と原田さんの二人だけだから、
あと一本足りないのかな?
と僕は思った。
つづく。。。