ボストンマラソン
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取引先との商談が終わって、
先輩と2人で公園のベンチに腰掛けた。
太陽が眩しくて、セミの鳴き声と工事現場の音がうるさかった。
先輩は、缶コーヒーを片手にボストンマラソンの歴史を僕に説明した。
「近代オリンピックに次いで、歴史の古いスポーツの大会だ」とか
「参加するために、参考タイムが何分台だ」とか
嬉しそうに話して、その数ヶ月後に先輩は会社を辞めた。
先輩が会社を去ってから、僕の趣味は走ることになった。
最初は短い距離しか走れなかった。
1km 走るだけで何度も立ち止まりたくなった。膝が震えて、喉が焼けるように痛かった。
初日は1.2km走った。
そこから次第に距離が伸びるようになった。
今では7km走れる。
走っていると、仕事のこととか、人間関係の悩みとか、嫌なことを考えなくてすむ。
心臓から血液が全身を駆け巡るように、小さな興奮が全身に行き渡っていく。
意識が自分の奥へ、奥へと進む。
小雨が降って、ジャージが肩や胸に張り付く
ジッパーを下におろすと、濡れた体に風が当たって気持ちが良かった。
車だと気が付かないけど、
走っていると、海の匂いや、木の匂いを感じる。
季節が変わる匂いも。
走る距離が伸びて、知らない場所を見つけた。
今度入ってみよう。
もっと、遠くまで走れるようになりたい。
いつか、ボストンマラソンに出てみたい。
また、先輩に会いたい。